「墓」をめぐる常識が大きく変わっている。新しい埋葬方法として注目されるのが「樹木葬」だ。昨年は、新しく墓を購入した人のうち、樹木葬を選んだ人が半数超に達したというデータもある。ただし、イメージ先行で選ぶと後悔することもあるようだ──。
今夏に父を亡くし、樹木葬にしたという埼玉県在住の60代男性が後悔の念を語る。
「数年前にテレビで特集されているのを見て、父は“自分の墓は樹木葬がいい”と言っていました。死んで狭い骨壺に閉じ込められるのは嫌だという思いがあったようなのですが……」
この男性の父親の願いは、山の中の大きな桜の木の下に眠り、桜が満開の時期に遺族が集まっていつまでも自分のことを想ってくれるような弔われ方だったという。
「桜の木の下に埋葬できる墓地を探し回ったのですが、いい場所が見つかりませんでした。結局、近くの寺院の樹木葬墓地に埋葬することになったのですが、遺骨は骨壺に入れて納骨室の上のプレートを木や花で囲む形になってしまいました。父は骨壺を嫌がっていたのに、生前の願いを叶えてあげられませんでした」
樹木葬への注目が年々、高まっている。お墓の情報サイト「いいお墓」が行なった「お墓の消費者全国実態調査」によると、昨年同サイトを通して新しく墓を購入した人のうち、樹木葬を選んだ人が調査開始以来はじめて半数を超えたという。一般的な墓や納骨堂を大きく引き離した。
寺や霊園が「永代供養」で管理してくれるうえに従来の墓より安価であり、「先祖代々の墓を守る」という意識が希薄になるなか、子供に継承させなくていいといった理由から樹木葬が支持されているという。葬送コンサルタントの吉川美津子氏が解説する。
「社会的にニーズが高まる『墓じまい』に際しての選択肢の一つとして、樹木葬に改葬するケースが人気です。子や孫に負担をかけたくないと考える親が選ぶことも多い。また、樹木葬では一般的に墓石が不要なため、従来の墓よりもコストを抑えやすいのです」