現在、日本国内の観光地で発生しているのが「オーバーツーリズム」の問題だ。国内外からの観光客が押し寄せ、地元住民の生活に支障が出るケースが続発している。過剰な混雑、ゴミのポイ捨て、私有地への無断侵入、騒音、トイレ不足など、「オーバーツーリズム」の悪影響はさまざまなところで散見される。地元住民に迷惑がかかるだけでなく、観光地としての満足度の低下も懸念されている。
オーバーツーリズムの背景には、コロナ禍が終わったことによる急激な観光客の増加がある。
円安が進んだ影響もあり、2010年代前半から日本を訪れる海外からの観光客が増加。このころから徐々にオーバーツーリズム問題は囁かれ始めていたが、コロナ禍により訪日外国人が激減してしまう。国内の観光地は大打撃を受け、サービスを縮小せざるを得ないケースも多かった。
そして今年5月、新型コロナウイルスの感染法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられたことで、訪日外国人や国内の旅行者が激増。しかしコロナ禍の時期に、多くの観光地は受け入れ態勢を縮小していたこともあり、オーバーツーリズムの問題が余計に深刻化している。
取材などで全国各地に行くことが多い雑誌編集者のKさん(40代男性/都内在住)は「いまの国内旅行は“最悪の状況”」だと話す。
「どこも宿泊費がかなり高くなっていて、さらには予約が取りづらい状況になっている。私の場合、仕事の関係もあってコロナ禍でも各地のホテルに泊まる機会があったんですが、当時は一般的なビジネスホテルなら1泊数千円ほどで泊まれました。それが今では1泊1万円超えは当たり前で、2万円近くすることもある。費用がかさんで大変です」
2020年に開催予定だった東京オリンピックに合わせて訪日外国人のさらなる増加を見込み、日本各地の観光地では新たに多くのホテルが建設された。しかし、コロナ禍によって五輪は延期され、海外からの来日客が激減、国内ではホテルが余ってしまう状況になっていた。
「京都や名古屋あたりは新しく建ったホテルも多く、コロナ禍の間はたしかにホテルが供給過剰という感じでした。それでも今は観光客が多すぎ。今年に入ってからはあまりにもホテル代が高すぎるので、取材後にネットカフェで一晩過ごし、朝早く新幹線で帰京することも何回かありました」(Kさん)