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【国立科学博物館の舞台裏】“モグラ博士”が教えてくれる「美しさを保つ剥製の秘密」「博物館における標本の意義」

上野本館の地球館3階「大地を駆ける生命」の展示。世界の哺乳類・鳥類がダイナミックに展示されている

上野本館の地球館3階「大地を駆ける生命」の展示。世界の哺乳類・鳥類がダイナミックに展示されている

“襲われない”サファリパーク

 茨城県のTXつくば駅から北に約2kmのところに、科博の筑波研究施設はある。

 科博には「動物学」「植物学」「地学」「人類学」「理工学」の5分野の研究部があり、六十数名の研究者が、ここ筑波で研究に打ち込んでいる。今回見学するのは、自然史標本資料棟だ。

「コレクションは、この建物に収蔵されています」と、施設の入り口で、前出の川田さんは説明を始める。ちなみに川田さんの担当は哺乳類で、“モグラ博士”の異名を取るモグラ研究の第一人者だ。

 動物研究部が管理する約7室のうち、上野の展示室でも人気の高い大型哺乳類の剥製標本庫から探索開始だ。

「ここにある剥製の数は、だいたい1800点だと思われます」(川田さん・以下同)

 まず目に留まったのが、いまにも襲いかからんばかりに牙をむくクマ、トラ、ライオンの猛獣たち。剥製とわかっていても、ちょっと怖い。ショーケース越しに見る剥製とは、迫力が違う。襲われる心配はないが、まるでサファリにいるかのような緊張感がある。

「これらは観賞用の剥製で、専門の業者が作っています。立ち姿のクマなどは、いかにもハンターが好みそうなポーズですよね」

 出来のいい剥製は、普通のものとどこが違うのだろうか。

「剥製を作るうえで難しいのは、毛に覆われていない部分。顔に浮き出た血管までもがリアルに再現されているものはいい剥製といえるでしょう。肛門や陰部など、見えないところまで作り込まれている剥製もポイントが高いです」

 剥製群の中には、ハワイの日系実業家で、ハンターでもあったワトソン・T・ヨシモト氏の財団から1997年に寄贈された「ヨシモトコレクション」412体(うち八十数点は上野に展示)がある。ヨシモト氏が記した狩りの記録と併せて重要なコレクションの1つで、過去の企画展でも人気を博したそうだ。

「同コレクションでおすすめはハーテビーストというウシ科の動物。顔の形はほとんど同じなのに、角の形状が個体ごとに著しく違う。“種とは何か”を考えさせられる興味深い動物です。飼うのが難しいため、動物園でも見られない動物でもあります」

 ハーテビーストは、上野の地球館3階「大地を駆ける生命」で見られる。

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