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人が行列する時の心理と脳科学 大阪万博からiPhoneまで、日本の「行列」50年史

1970年の大阪万博の来場者は6400万人だった(時事通信フォト)

1970年の大阪万博の来場者は6400万人だった(時事通信フォト)

 写真は、50年前に開催された“大阪万博”で、各パビリオンに向かう観客の行列だ。本来、私たちは混雑を避けたいはずなのに、なぜ行列には並びたくなるのか?

 東洋大学社会学部社会心理学科教授の戸梶亜紀彦さんは、「その列に並んだ先に、自分が手に入れたいものや目的があるから」と話す。

 また、「列に並ぶと忍耐力も鍛えられる」と言うのは、脳内科医の加藤俊徳さん。

「私たちは、欲しいものへの熱量が大きければ大きいほど、やる気を出すドーパミン効果で、長時間でも苦痛を感じずに並ぶことができるのです」

 それだけではない。

「もう1つ、特に目的がなくても行列を見て『何があるんだろう』と興味をそそられる、他者に影響されて並ぶ場合があります。特に飲食店の場合は、行列になっている方が“おいしい”と判断し、列の長さが店の評価に感じられます」(戸梶さん・以下同)

 たとえば、2つのラーメン店が近くにある場合、最初の人が一方に並ぶと、2番目以降の人もそちらに並びたくなり、人が人を呼ぶ。この、他者の選択に影響される行動は、経済学では「ペンギン効果」と呼ばれている。

「そこで注目すべきは『認知的不協和』です。これは、“長く並んだ”からには“おいしくなかった”と思いたくない心理のこと。この場合、人はそこそこの味でも“おいしかった”との評価をしたくなるため、よい評判から次々と並ぶ人が出てくるわけです」

 震災の際に整然と並ぶ日本人が世界から称賛を浴びたが、そこにはこんな理由もある。

「これはアジアの農耕文化が育んだ『相互協調的自己観』をベースに、幼少期からの教育で培われた素養が大きく影響しています」

 このとき、脳内では次のようなことが起こっている。

「右脳で大多数に従っている状況に同調することで、左脳で自分の気持ちを考えることなく容易に安心感が得られるのです」(加藤さん)

 行列の背景には、こんな心理と脳科学が働いている。

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