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【国立科学博物館の舞台裏】標本は収蔵場所に困っても受け入れる「ここに未来の大発見があるかもしれないんですよ!」と研究者

アマミノクロウサギの仮剝製がずらりと並ぶ

アマミノクロウサギの仮剝製がずらりと並ぶ

研究者の多忙な日常

 研究者は研究だけやっていればいいわけではない。特別展や企画展の立案、準備のほかに講演など、普及に関する業務も多いのだ。

「特別展は3年前から準備が始まります。いまは、日常業務の合間を縫って来年3月に開催する『大哺乳類展3』の図録の原稿執筆にとりかかっています。

 一方の企画展は、研究者がやりたいことをやりたいようにできるので、楽しいんです。忙しくても展示を作ったり、解説を書いたりするのがわりと好きなので、全然苦ではありません。業務が重なるとどうしても自分の研究を犠牲にしがちですが、だからこそ年に一本は論文を書くことを自分に課しています」

 科博の中で、お気に入りの展示物はと聞くと……。

「貝ですね。小学6年生の次男と南房総に貝拾いに行ったとき、1時間で50種以上の貝が拾えたことに感動して以来、貝が気になっているんです。

 ぼくの研究対象の哺乳類だったら、近くの山で捕れるのはモグラとネズミのせいぜい3、4種類ですから、多様性のレベルが違う!『なんでおれは哺乳類の研究を選んだんだ!』と、一瞬後悔したくらい(笑い)。

『イモガイ』の展示(地球館1階)の前に立つたびに『まだまだ勉強しなきゃ』と思いますね。死ぬまでに知り尽くせるとは思いませんが、できるだけ未知のことを知りたい。“知らないことを知る喜び”を求めて、人は博物館に行くんじゃないでしょうか」

 研究者でさえ新たな発見があるという科博の奥深さ。そして、アツい舞台裏……。知れば知るほど、展示物の見え方が変わるようだ。

【国立科学博物館】
 1877(明治10)年に創立された自然史・科学技術史に関する総合科学博物館。約500万点の標本・資料を有し、「調査研究」「標本・資料の収集・保管・活用」「展示・学習支援」という3つの活動を軸に事業を行う。上野公園内にある上野本館をはじめ、茨城県つくば市の筑波研究施設(展示なし)と筑波実験植物園、東京・白金台の「附属自然教育園」の3地区で構成される。

 上野本館は日本館・地球館の2棟に分かれ、展示総数は約2万5000点。常設展や企画展に加え、年数回特別展が行われる。

【地球館】
「地球生命史と人類」をテーマに、生命が誕生と絶滅を繰り返しながら進化してきた道のりや、世界中に分布する多様な生物たち、科学技術の道程などを紹介する。展示室は地下3階~地上3階まであり、どこからでも自由に回れるようになっているが、どこから見てよいのかわからないという人は、ホームページ内の「おすすめコース」を参照のこと。

【日本館】
 テーマは「日本列島の自然と私たち」。日本列島の生い立ちや日本における人類史などを、標本や人型模型を使って辿る。1931(昭和6)年に完成したネオルネサンス調の建物(国指定重要文化財)も見応えがある。忠犬ハチ公や南極観測隊に同行したジロの剥製も展示されている。展示室は地下1階~地上3階。

【住所】上野本館 東京都台東区上野公園7-20
【開館時間】9:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜(月が祝日の場合は火曜)、年末年始(12/28~1/1)、くん蒸期間(6月下旬)
【料金】一般・大学生:630円
65才以上および18才未満、障がい者のかた、各種会員(友の会会員、リピーターズパス所有者、賛助会員、大学パートナーシップ入会大学の学生及び引率の教職員):無料 特別展は別料金

(了。前編から読む

取材・文/佐藤有栄 撮影/竹崎恵子

※女性セブン2023年11月16日号

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