「年収の壁」撤廃の狙いは別にある
第3号撤廃案に対しては反発も大きい。そこでこの案の行く末を明確にせずに、岸田内閣が大きなメスを入れようとしているのが「年収の壁」対策だ。
第3号には完全な専業主婦だけでなく、パートタイムで働いて収入を得ている対象者も少なくない。しかし、従業員数100人以下の企業で働いている場合は「年収130万円未満」、101人以上の企業なら「年収106万円未満」であることが第3号の条件となっている。
この金額を超えると、配偶者の扶養から外れることになり、厚生年金に加入して保険料を支払う義務が生じるため、超えてしまわないようセーブすることは珍しくない。
岸田内閣は、年収の壁が賃上げや働き手不足の要因になっていると“敵視”し、いかにも労働者のためであるかのように撤廃を進めるが、本当の狙いは別にあるという。
「政府は第3号の数を減らし、厚生年金保険料の納付義務者を増やそうとしているのです。壁を超え、厚生年金保険に入ることにメリットがないわけではありません。ただし、給料から15%ほどが保険料として徴収されるので、手取りが減ってしまう。その分、国民年金に加え厚生年金も受給できますが、減った分の元を取るには、年金受給開始から17年もかかる試算になります」
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