「新しい資本主義」を掲げ、減税、賃上げ、物価高対策などを声高に繰り返しては、拳を勇ましく振り上げる岸田内閣。年金改革にも意欲を示しているが、その内実は、あまりにもひどい“改悪”だった。
岸田文雄首相が「(第3号被保険者について)抜本的に制度を変えないといけない」と発言したのは、10月上旬のこと。第3号被保険者(以下、第3号)とは、会社員・公務員などで厚生年金に加入する者(第2号被保険者)に扶養される配偶者のことを指し、国民年金の保険料を支払わなくとも加入期間はカウントされ、将来満額の国民年金を受け取れる仕組みだ。
第3号廃止で年間約20万円の負担増
政府はかねて、「専業主婦世帯の減少という家族の在り方の変化に合わせ、年金制度も変革すべき」「夫が自営業者なら専業主婦の妻に保険料負担があるのに、会社員の妻なら保険料を払わなくてもよいのは不公平だ」という意見を大義名分に改革に踏み切ろうとしてきたが、その実は不公平の解消などではない。「年金博士」こと、社会保険労務士の北村庄吾さんが解説する。
「第3号が廃止になれば、新たに国民年金の保険料を月1万6520円、年間で19万8240円払う必要が生じます。妻に収入がなければ、夫が妻の保険料を負担せざるを得ない。2021年度末時点で、第3号対象者はおよそ760万人となっており、保険料徴収が始まれば約1兆4000億円の財源になる。
少子化が止まらず勤労者の数は減るばかりの一方、厚生年金保険料をむやみに上げることもできず年金の財源が目減りしていくなか、保険料収入を増やすために“取れるところから取ってやろう”というのが政府の思惑でしょう」(北村さん・以下同)