仲のよいきょうだいでも揉めるケースは少なくない
相続に詳しい税理士の桑田悠子さんは「もともと仲がよかったきょうだいであっても相続で揉めるケースは少なくない」と語る。
「亡くなった親からみれば『まさかうちの子たちが』と信じられないかもしれませんが、資産を前にして話し合ううちに関係がこじれてくるきょうだいもいます。また、たとえきょうだい同士は仲よく話し合いたいと思っていたとしても、それぞれの配偶者が絡み火種が多くなるケースもある。故人と血縁がなく、言ってしまえば“第三者”の配偶者が中立な立場として仲介しようとしたり、より多く相続したいと考え、そのせいで生じるトラブルもあります。
反対に、長男の嫁が義父を頑張って介護していたのに相続人でなかったために遺言書に反映されておらず、相続会議においても配慮してもらえず、切ない思いをすることも、“あるある”の事例だといえます」
身内同士の揉めごとゆえに、心理的な負担が大きくなることも特徴だ。
「よく『きょうだいは他人の始まり』といいますが、本当にその通りです」と語るのは、臨床心理カウンセリングとまり木の松尾叙子さん。
「仲のいいごく一般的な家族であっても、実家や預貯金などちょっとした遺産相続をきっかけに突然仲が悪くなったことで、“どうして信頼関係がなくなったのか”と心を病み、相談に来る人は少なくありません。
特に目立つのは、きょうだいの中で一生懸命介護をした人がそのことを相続時にないがしろにされたり、ほかのきょうだいが実家に住む長男夫婦に『家を売って等分してほしい』と迫るケース。“きょうだいで相続した財産なのだから、私にも権利があるのは当然”との理由ゆえの行動のようですが、いくら共有財産だったとしても故人の思い出が詰まった家を売ることや親の介護の貢献度を評価されないことを、物理的・心理的に受け入れがたいと感じ、心労がかさんで相談に来るかたがいらっしゃいます」(松尾さん)