普通の人でも避けて通れないのが、相続問題。時には遺族のあいだで争いが生まれ、“争族”につながってしまうこともある。では、どんな時に争いが起こりがちなのか、そのリアルケースを元に解説していこう。
「母の遺産のほとんどを姉に取られてしまって、悔し涙が止まりません」
埼玉県在住の女性・Aさん(66才)が声を振り絞る。
「母は長く大阪の実家で姉家族と二世帯住宅で暮らしていたのですが、一度倒れて入院してから介護が必要になったため私が都内の施設を探して入居させたんです。そこから息を引き取るまでの数年は私が通ってずっと面倒を見ていたのに、姉は同居していたときに夫と結託して“孫のためにも私たち夫婦は多めに財産が必要なの”なんて言って遺言を書かせていたみたいなんです」
実際、いざ遺言書を開示してみると、“孫のために”という名目で財産は8対2の割合で分けるようにと書いてあったとAさんは続ける。
「そりゃあうちは子供を持たずに夫婦ふたり暮らしだったけれど、やっぱり納得できなくて。生前の母に何度も『あんたは昔から優しい子。本当にありがとう』と言われたのがうれしい記憶として残っていたし、姉との関係も母が亡くなるまでは決して悪くなかったけれど、遺言書を見てから、母の愛にも実はこんな“内訳”があったんじゃないかとも思えてきて、平常心ではいられなくなってしまいました」