「お布施が足りないよ」
今ある墓を撤去するためには、寺院墓地の場合は寺への相談が必要になる。その際に、檀家を離れるための費用として高額を請求されるケースが少なくない。国民生活センターには、700万円を請求された70代女性の事例などが報告されている。大阪府在住の70代男性は、持参したお布施を寺院側から“足りない”と突き返されたという。
「田舎の親がもともと檀家で、死んでからもう何年も経ちます。とはいえ住職にはお世話になったし、墓じまいにあたっては檀家をやめるための離檀料として100万円を包んでいきました。その時は住職がいなくて奥さんに渡したのですが、その日の夜に住職から『うちを離檀するなら1本(100万円)足りない』と言われました」
日本人の宗教観の変化や都会への人口集中などにより、檀家離れに悩む寺が増えている。そうしたなかで墓じまいが加速すると、檀家料や法事のお布施などの収入源はさらに減る。そのため、様々な方法で檀家をやめさせないようにするケースが見られるという。終活に詳しい行政書士の明石久美氏はこう言う。
「離檀を切り出すと墓じまいに必要な書類である『埋蔵証明書』にサインをもらえず、それと引き換えに極端な事例では1柱につき数十万から数百万円、墓に入っている先祖全員分の法外な離檀料を求められるケースの報告もあります。
そもそも、離檀料を請求できる法的根拠はありませんが、寺と揉めると墓じまいがスムーズに進まない。墓の撤去を行なう石材店は寺との長い付き合いがある場合が多いため、石材店に作業を引き受けてもらえないことも多い。とても厄介な問題です」