檀家に残るのもキツい
ただし、交渉するのが面倒だからと問題を先延ばしにすると、さらなるトラブルを招くことになりかねない。文化庁「平成29年版宗教年鑑」によると、全国的に寺の経営難が問題となっており住職不在の廃寺は1万~2万といわれる。残っている寺でも檀家離れがどんどん進み、個々の檀家に求める負担が大きくなってきているという。福岡県在住の60代男性は、寺から突然の寄付を求められて対応に困っている。
「田舎の親が信心深くて檀家のなかでも5本の指に入るくらいの額を寄付していて、親が亡くなって何年も経っているのに『寺の修繕に300万円寄付してほしい』と連絡がありました。我々の世代には関係ないと思っていましたが、こんなことになるなら早く墓じまいをして離檀しておくべきでした」
「代替わり」のリスク
前出の大橋氏が指摘する。
「昔に比べて寺との関係が希薄になり、寺側が代替わりした檀家の経済状況などを知らない場合も多いです。自主的なお布施として檀家が費用を負担するのならともかく、年に一度の法要で顔を合わせるかどうかの関係性で高額な費用を求められれば、檀家としても困るのは当然でしょう」
明石氏も、寺と檀家の代を跨いだトラブルが増えていると言う。
「しばらく菩提寺と疎遠になっているうちに、寺も檀家も代替わりしているというケースが増えています。親が寺との間で交わした契約書があるのなら、内容を確認しましょう。寺側の態度が硬化するのは、親が亡くなった後に護持費などを延滞してきたことが原因である場合もあります」
気付かないうちに寺との関係性がこじれ、墓じまいがうまく進められなくなる可能性もあるのだ。
※週刊ポスト2023年11月17・24日号