少子化で仏壇を受け継ぐ子供がいなかったり、地方にある実家を出た子供が暮らす都会のマンションでは仏壇を収納できる部屋がなかったりといった事情から、仏壇を閉じざるを得ないケースも増えているという。このあたりについても、墓じまいのニーズが高まる事情と重なる。
「仏壇じまいの際に預かった御位牌は永代供養の位牌堂に安置することも可能です。子供の世代に迷惑をかけたくないという親御さん世代からのご相談も多いですね」(同前)
仏壇店に相談する選択も
魂抜きをしたうえで、ご本尊や掛け軸などを外した仏壇は、「木の箱と同じなので粗大ごみとして処分してもらう」(純空住職)のだという。
「市内を車で走っていても、仏壇が粗大ごみとして捨てられているケースを目にすることがあります。大阪市の場合、粗大ごみとしての仏壇の回収費用は1000円です。捨てられているのが抜魂供養された仏壇かはわからないですが、やるかやらないかは、ご自身の気持ちの問題ということになりますね」(同前)
親が毎日手を合わせてきた仏壇をそのまま粗大ごみに出してしまっていいのか──そんなふうに悩み、処分に困っているケースは多いのだと前出のシニア生活文化研究所・小谷氏も言う。
「もちろん、寺院に相談してもいいのですが、そうすると“お気持ち”としてのお布施が必要になるので、別の選択肢を探してもいいでしょう。たとえば、亡くなった人が使っていた布団や服などを燃やしてくれるお焚き上げ業者にお願いしてもいいし、仏壇店に相談すれば数万円で引き取ってもらえます。
亡くなった方を偲ぶ方法は、様々あっていいと思います。仏壇がないといけないという話ではありません。親族などと相談して、気持ちが安らぐ方法を選ぶのが、結果として最善の選択になるでしょう」
墓も仏壇も、長年にわたって代々受け継がれてきたものであることが多い。どんな「しまい方」が相応しいと考えるかは、人によって当然、異なるはずだ。どのような選択肢があるか、金額の相場はいくらくらいなのかといった情報を把握したうえで、一人ひとりが悔いのない判断を目指すことが肝要となるのだ。
※週刊ポスト2023年11月17・24日号