日本でも可能なのか
世界のエコロジストから注目されているコンポスト葬だが、日本が取り入れることはできるのだろうか。
「現状は難しいでしょうね。コンポスト葬の根本的な考え方は、土になって草木の肥料となることで自然に還ることです。ところが日本ではたとえ土になっているとはいえ、それを野原に撒くと、死体遺棄罪に抵触する恐れがあります。そもそも人の死体を堆肥に加工するということが“死体損壊”に当たると判断されるかもしれません」(鵜飼氏)
アメリカでもコンポスト葬が認められるのは簡単なことではなかったようだ。
「開発したリコンポースの社長は上院議員に働きかけるなどのロビー活動を繰り返し、遺体を堆肥化させるための法整備を勝ち取ったようです。地道な活動が功を奏して、現在ではコロラド州、カリフォルニア州、オレゴン州など、幾つかの州で合法化されているようです」(鵜飼氏)
コンポスト葬に近いのは「日本古来の土葬」だと鵜飼氏は言う。
「土葬はかつての日本では珍しいことではありませんでした。腐って土になる木製の棺桶に収めて、そのまま埋めるので、時間をかければいずれはすべて自然に還ることができます。ただ、様々な事情から現在の日本では99.9%が火葬です。土葬にしてほしいと願っていたとしても、受け入れてくれる墓地を見つけるのは簡単なことではありません」(鵜飼氏)
2023年の1年間に国内で死亡した日本人は、統計を取り始めて以来最多となる約156万人だった。死亡者数は増え続け、2040年には約167万人に達すると試算されている。日本は1年間に、政令指定都市一つ分ほどの人が亡くなる「多死社会」だ。そうしたなかで、“完全に土に還る埋葬”が広がる可能性はあるのだろうか。