離婚後に妻が受け取れる「年金分割」制度の導入
一般的に「熟年離婚」という言葉は、「婚姻年数20年以上の夫婦の離婚」を指す。中高年の離婚が増えた2000年頃から言葉として浸透するようになり、2005年には定年退職した夜に妻から離婚を切り出される夫を描いたドラマ『熟年離婚』(テレビ朝日系)が話題となった。
実際、厚生労働省の調査によると2007年以降20年以上連れ添った夫婦の離婚率は増加の一途を辿っており、2020年には過去最高を記録した。
熟年離婚の増加に伴い、その中身も変化していると話すのは、『炎情─熟年離婚と性』の著書があるノンフィクション作家の工藤美代子さんだ。
「20年前までは夫の退職までひたすらがまんして、退職金をもらった途端に『離婚してください』というパターンが主流でした。当時の女性は結婚後に仕事を辞めて家庭に入る人がほとんどだったため、経済的な理由から離婚に踏み切れず、言わば不幸を体内にため込み続けて爆発する形でなければ別れられなかった。
しかし最近は結婚後も仕事を続けて社会とつながり続け“自信を持って離婚を選ぶ”女性が増えました。家庭から解放されて、それまでがまんしていたことにチャレンジしようと、ポジティブな気持ちで離婚する人は珍しくありません」(工藤さん)
さらに、離婚後に妻が受け取れる「年金分割」の制度の導入もある。
「2007年に始まった年金分割制度によって、夫の同意または裁判所の決定があれば、結婚期間に相当する厚生年金を最大2分の1まで年金として受け取れるようになりました。マイホームや退職金など婚姻期間中に形成した財産も、分割して受け取ることができるのも広く知られるようになり、知識を得た女性たちは夫にがまんする人生を捨てて、熟年離婚を選択するようになったのです」(岡野さん)