「この人にだけは介護されたくない」 という一心で…
人生後半に差し掛かり、体の衰えを感じる年齢だからこそ、「この人にだけは介護されたくない」という理由で離婚を選ぶ人もいる。
「年齢を重ねると大きな病気で入院することもありますが、そんなときに一生懸命に介護しても夫から感謝の言葉がない。妻が病気になってもいたわりの言葉もなくお見舞いにもこないどころか、具合の悪い妻を尻目に『おれもなんだか調子が悪い』などと言い出す夫もいる。そうした経験から離婚を決意した人もいます」
末期のがんで、今年4月に医師から余命半年と告げられた長野県在住のCさん(61才)が真っ先に行った“終活”は、30年連れ添った夫との離婚だった。
「12年前に乳がんが見つかり、転移と再発を繰り返してここまできました。夫は乳房を切除した私の傷痕を見て『醜い』と吐き捨て、堂々と風俗通いをするような人。寝込んで家事ができない私を『役立たず』とののしることもありましたし、医師にすすめられた新薬も『お金がかかるから』と使わせてもらえなかった。だけどここまでされても、ひとりになる勇気が持てずにいたんです。
でも余命を伝えられて、決心がついた。夫に看取ってもらうなんてまっぴらだし、同じお墓になんて入りたくありません。何より私の生命保険を夫に渡したくなかった。だから夫には余命の話はせずに、『地方に移住したい』と伝えたら、『ひとりで勝手に行け』とすぐに離婚が成立しました。
いまは地方で友人と暮らしています。いずれは緩和ケア病棟に入る予定ですが、ストレスがないし、そろそろ半年になりますが、いっこうに“お迎え”が来る気配がないんです(笑い)」
仲がいい夫婦であっても、介護疲れから関係が悪化することは決して珍しい話ではない。翻っていえば、熟年離婚を考えるほどすれ違った状態の夫婦にとって、介護は高い壁となると工藤さんは言う。
「離婚を考えていた矢先に夫が病気で倒れて介護が始まり、“この状態で別れたら、子供たちに負担がかかるから別れられない”と泣く泣く諦めた女性は少なくありません。
確かに昔と比較すればハードルは大きく下がりましたが、熟年離婚はタイミングを逃すと格段に難しくなる。離婚するなら、互いの体が弱って関係がややこしくなる前に踏み切った方がいい。若い方が体力もあるので、新しいパートナーを見つけたり仕事や趣味を楽しんだりする機会も増えます」(工藤さん)
※女性セブン2023年11月23日号