政府がコロナを乗り切るために使った経済対策の予算は、2020年度だけで総額約77兆円、事業規模にすると約293兆円に達する。その後も3年間にわたって巨額のカネが注ぎ込まれてきた。
この空前の大盤振る舞いを仕切ったのが財務省である。
本誌・週刊ポスト前号(2023年11月6日発売号)では、自治体に配られた「コロナ地方交付金」がコロナ対策とは関係のない事業に無駄遣いされていた事実を報じたが、中央省庁の“予算流用”はケタ違いだ。
コロナ経済対策を趣旨として組まれた補正予算で、文科省はH3ロケット、防衛省は地対空誘導弾、国土交通省(海上保安庁)は大型巡視船の建造など、各省庁が「財務省からお金が降ってきた」とばかりに使いまくっていた。
国民から搾り取った税金を、各省庁に配分することが財務省の力の源泉だ。予算をバラ撒けばバラ撒くほどこの役所の力は強まる。
流用の実態を具体的に見ていくとそれがよくわかる。まず防衛省がコロナ経済対策で得た予算は総額1兆円を超える。だが、そのカネは能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)やP-1哨戒機、C-2輸送機などの建造に充てられ、普天間米軍基地の辺野古移設工事にも801億円が使われていた。
これらも「コロナ対策」なのか。防衛省に訊ねた。
「2021年度の補正予算は『コロナ克服・新時代開拓のための経済対策』に基づき編成されていますが、この経済対策は『国民の安全・安心の確保』を第4の柱としており、我が国周辺の安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増すなか、ミサイル防衛能力や南西地域の島嶼部の防衛などに必要な防衛力強化を加速することとしています」(報道室)
コロナ予算を「国民の安全・安心」に使うと言われれば、国民は感染からの安全確保だと受け止めて反対はしない。まさか国防費増額のことだとは思いもしない。