窮地を救ってくれた息子の言葉
終始明るく話す岡野さんだが、トラブルも尽きなかった。
「私、がん保険に入っていて、がんで手術、入院したら900万円下りる保険契約をしていたんです。これはがんが判明する前の話ですが、保険会社の担当者に、『先進医療保険がついているものに変えたい』と相談して、よく確認もせずにプラン変更してはんこを押したんですが、肝心のがん保険のプランを解約していて、せっかくこれまでかけてきたのに900万円の保険金が下りなかったんです! これはかなりショックでしたね」
このとき、当時28才だった息子の言葉が救いとなった。
「息子は私のこと、お前って呼ぶんですけど、『お前、900万円よりも命が助かってよかったじゃん。お金よりも命だよ』って言われて、ハッとしました。
私は会社も経営しているし、それまでの価値観は健康よりもお金だったんです。何をするにもお金が必要ですし、大事ですからね。でも、病気をして、命よりも大事なものってあるんだろうか?と心から思い、900万円はキッパリと諦められました」
病気の際も、息子の存在が支えとなった。
「息子は独立していて、普段は家にも寄り付かないんですが、入院中は毎日お見舞いに来てくれました。だけど、私のことを心配してお見舞いに来てくださるかたもたくさんいて、なかなか息子と2人きりの時間が過ごせなかったんです。
私にとって息子はたったひとりの肉親。そのとき、心底息子がいてくれてよかったなと思いましたし、退院したら2人で旅行に行こうと約束しました。晴れて退院後は、息子が成人して初めて2人きりで千葉県の鴨川に行きました」