そうした厳しい条件を高いレベルで実現してくれたのがスーパーハイトワゴンということになるわけです。N-BOX以外にもダイハツ・タント、スズキ・スペーシア、日産・ルークス、三菱・デリカミニを始めとした人気モデルなどがズラリと揃う激戦市場です。その中でN-BOXはナンバー1の座を死守してきているのです。当然、6年ぶりのモデルチェンジで最新モデルが登場するとなれば、注目度が高いことも理解できます。
さっそく新型N-BOXの内容をざっと調べてみると、もっとも気になる室内サイズがさらに拡大されていました。前述したように軽自動車にはボディサイズに制限がある中でも、旧型よりも室内高を＋5mm、後席の乗員がシートに座った状態におけるショルダールーム（肩の部分とリアウインドーの間の寸法）を＋55mmも拡大しています。これまでも「もはや限界では」と言われていた空間の拡大をまたしても実現しているのです。当然ですが大人4人が互いに肩も触れることなく、ゆったりと座れる空間を確保しているのです。これだけでも評価に値するのですが、軽自動車ユーザーは実用性について厳しいことでも、日本トップクラスでしょう。
実はN-BOXのオーナー達は荷室に自転車を載せることも多いそうです。突然の降雨、子供達を駅まで迎えに行く、といったような使い方です。当然ながらリアシートをたたみ、自転車を積み込むときの操作性のよさ積み込みやすさは気になるポイント。積み込めるだけでもすごい、満足と考える人にとってみれば、さらにどんな工夫を施したのか、かなり気になるところです。
そこで新型N-BOXのさらなるこだわりを見ると、アップハンドルの自転車でも、ルーフにハンドルが当たらないようにしたと同時に、これまで以上に安定して積み込みが可能という細かな配慮です。もちろん驚きはそれだけに留まらないことを、走り出して発見することになりました。
軽自動車にとっての上質を実現した新型
エンジンをスタートさせた瞬間、その振動の少なさ、騒音の低さによって今回の進化をまず感じました。シャシやボディ骨格などは従来型を踏襲しているというものの、細かな部分での剛性アップが施されつつ、まさに重箱の隅をつつくようにして問題点を改良しながら進化したことを証明するかのように静粛なのです。これは本当の驚きであると同時に、ドライビングの際は乗員の疲労度の低減に貢献することは間違いありません。
ホンダらしいスッキリとしたデザインはボクシィで安定感がある
さらに走り出すとその驚きは大きくなります。前後のサスペンションはソフトにしてしなやか。単に柔らかいのではなく、十分にストロークを感じながら路面のうねりをしなやかにいなして走るのです。
その乗り味をより輝かせているのが改良を加えられた電動パワーステアリング。とてもフィーリングが良質なんです。操作感は軽いのですが、一方でしっかりとした手応えを感じさせる味つけによってドライビングの楽しさと言うか、操作の楽しさを意識させてくれます。乗り心地や操縦安定性というのは目に見えないモノだけに変化を感じにくいのですが、今度のN-BOXの性能向上は、多くの人が確実に感じ取れる部分だと思います。
こうした良質な乗り味は、ルーフライニングの構成変更や遮音層フィルムを追加したというフロアカーペットなどでも実現できています。エンジンをスタートさせただけで感じた上質さは、走り出してさらに威力を発揮しているわけです。
また先進運転支援システム（ADAS）である「ホンダセンシング」にもさらに磨きがかかっています。これまでも操作性や、その自然な制御の味つけには好印象でしたが、今回はさらに使いやすく、快適な走りに仕上げてくれていました。前方の車両がいなくなった際の自然な加速感とか、レーンキープアシストの正確さ、そして衝突軽減ブレーキなどの制御は実に自然な上質なフィールは、満足度がかなり高いのです。
新たに「近距離衝突軽減ブレーキ」やペダルの踏み間違いなどで速度が急に上がらない「急アクセル抑制機能」も追加され、安全性はさらに高まりました。ただ少し残念なのは急アクセル抑制機能がディーラーオプションだったこと。これも二律背反的な議論ですが、リーズナブルな軽自動車ほどADASを充実させてほしいと思います。
