初代のホンダN-BOXが2011年12月に登場した当時、それまで新車販売の王座に君臨していたトヨタ・カローラを抜き去ったことで大きな話題を呼んだ。それ以降、国内の新車市場の年間販売台数で、軽自動車として8年連続、普通車を含めても2年連続でトップの座に着くなど、ベストセラーを続けてきた。その軽自動車のスーパーハイトワゴンが6年ぶりのフルモデルチェンジによって3世代目のモデルへと変身。一部には「あまり変わっていないのでは」という意見もあるが、果たしてその進化の中身は? シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。自動車ライターの佐藤篤司氏が、N-BOXの変身の中身と実力をレポート。
数々の制約の中でいかに進化するかが成否を分ける
2000年代に入って以来、新しいモデルが登場するたびに「もう車はこれ1台で十分かも」と感じてしまうほどレベルの高い仕上がりを見せている軽自動車。車に対する趣味性を排除し、実用性を優先して車選びをすると、軽自動車は選択の筆頭に来るのではないでしょうか。とくにスーパーハイトワゴンと呼ばれる背の高いワゴンは、人を乗せ、荷物を積んで、高速道路も快適に走れる、ほぼ不満のない存在です。
軽自動車にはエンジン排気量が660cc以下という規格以外に、ボディサイズにも全長3.4m以下、全幅1.48m以下、そして全高2.0m以下という決まりがあります。そのひとつでもオーバーすれば小型車となってしまいます。
実はこのボディサイズの規格、言わば足かせですが、車開発において相当に厳しいものです。安全性を確保するならボディを厚くしたりクラッシャブルゾーン(潰れて衝撃を和らげる空間)を設けたりしますが、ただでさえ小さなボディサイズの中でそれを実現しようとすれば、居住性を犠牲にするしかありません。しかし、それでは使い勝手のよさも快適性も犠牲にしてしまいます。まさに二律背反の条件をまとめ上げなければいけないのが軽自動車なのです。