ゼロコロナ政策の反動を懸念する声も
現状において、未知のウイルスによる感染が発生し、それが原因で感染症患者が急増しているということではないようだ。それではなぜ、平年では見られないような現象が起きているのだろうか。
中国では約3年にも及ぶ厳格なゼロコロナ政策によって、既存の感染症の拡大が抑えられてきたことで、集団として感染症に対する抵抗力が落ちたことが原因と指摘する声もある。ただ、こうしたマスコミなどを通して拡散される見方は、一部の政府見解を含め、科学的なエビデンスを伴うものとは限らない。やはり、研究者によるしっかりとした裏付けのあるデータに基づいた説明が聞きたいところだ。
中国では多重感染が懸念されるような状況であることから、国務院は11月24日、「冬から春にかけて新型コロナウイルス感染およびその他の主要な感染症を予防し、管理することに関する通知」を発表している。港湾、空港などでの水際対策や、医療機関における準備態勢の強化、高齢者施設、保育施設、学校などへの衛生教育の強化、防疫組織のリーダーシップ、責任遂行の強化など、6項目からなる措置が発表されている。さらに当局は、マスクの着用や、こまめな換気、手洗いといった衛生習慣の徹底を呼び掛けている。
中国ほど厳しいわけではなかったが、日本でも新型コロナウイルス感染症の位置付けが2類相当から5類へと変更された今年5月までは、国際的にみれば厳格な感染対策が続けられてきた。日本においても、そうした対策による反動、多種類の感染症の拡大、重複感染の発生を懸念する声もある。
政府に何か対策を期待するというよりも、もう一度、各自が感染症への警戒レベルを引き上げて、予防に努めたいところだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。