コロナ対策が国家財政を圧迫している現実がある。2021年2月に医療従事者への先行接種が始まって以来、隠れた社会問題となっていたのがワクチンの「廃棄」だ。都内の大学病院に勤務する医師が打ち明ける。
「ファイザー製ワクチンは1バイアル(瓶)で6回の接種を前提としましたが、当初日本はこれに対応できる注射器の調達が間に合わず、1瓶で5回しか接種できなかった。そのため余った分を相当数、廃棄していました」
2022年1月から高齢者を対象に3回目接種が始まると、需要を見越して大量のワクチンを確保した各自治体は、思わぬ事態に直面した。
「それが、若者を中心とした接種控えです」
そう話すのは、都内で個人クリニックを経営する医師。
「政府が“打て、打て”と号令を出したので高齢者の3回目以降のワクチン接種率は高いですが、20~30代は感染と副反応のリスクを天秤にかけ、2回目まで接種しても3回目のワクチン接種率はまったく伸びなかった。そのため大量のワクチンが使われないまま有効期限切れし、廃棄せざるを得ませんでした。未使用で期限切れのワクチンは感染性廃棄物として感染対策用の箱に詰めて処分施設に運び、温度850℃の焼却炉で焼却処分します」
日を追うごとにワクチンの効果を疑問視する人が増え、若い世代を中心に「ワクチン離れ」が進んだのだ。これに慌てたのが、2.4兆円の予算を投じて8億8200万回分のワクチンを確保した政府だ。政府は追加接種の回数とともに有効期限を延ばし、当初6か月だったファイザー製ワクチンの有効期限は9か月、12か月、15か月と3度も延長した。モデルナ製も6か月の有効期限が7か月、9か月と延びた。
しかし、それも焼け石に水で接種率は伸びず、昨年末のTBSの報道によると、2022年に関東の1都6県で合計約314万回分のワクチンが廃棄されたという。