中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

なぜ「タワマン記事」は注目を集めるのか? タワマン住民の嘆きを見て溜飲を下げる非居住者たちのメシウマ心理

タワマンを購入して後悔している知人のリアルな声

 これから日本の人口は減少に転じ、空き家も増えるため都心の一等地を除き土地や家の価値は下がるでしょう。タワマンブームの頃は広告で夢を煽り、購入者が勝手にそのセレブ生活をこれでもか、とSNSで見せつけ、購入意欲に火を点けました。しかし、タワマンを購入している私の知人達の間でも「これはない投資だったな……」的意見が増えています。

「通勤・通学時間帯の各駅停車エレベーターがつらい。駅直結を謳っているのに、改札に着くまでに最低12分は見なくてはいけない」(50代男性)
「ラウンジで友人とお茶を飲み、ゆったりしたかったけど、子供達が大騒ぎしていて優雅なセレブ生活とはかけ離れた空気になっている」(40代女性)
「ゴミを各階で出せるのはいいけど、管理費と修繕積立金が高過ぎる。あと子供は地面に近い環境で過ごす方がいいのでは、と最近思うようになった」(40代女性)

 そして、これはタワマンに限った話ではないのですが、離婚に至ってしまった夫婦は、売却をめぐりモメることも多いです。ある50代夫婦は、折半でローンを組んだのですが、「少しでも早く売りたい」妻と、「もう少ししたら、コロナが本格的に収束したら海外富裕層に高く売れるはずだ」と考える夫との間で、なかなか合意ができないと言います。

妻としては、「さっさと金額を決めて、得られる収入が支払う収入よりも少し多くなればいい」程度の考えで、早く次のステージへ行きたいそうです。しかし、夫は不動産市況を分析しながら、少しでも高く売れるタイミングを探っている。そのため互いに声も聞きたくない相手と電話で話し合わなければならず、それが苦痛だといいます。

 1970年代に輝いた多摩ニュータウンのような大規模団地が、その後、下火になっていったように、タワマンも2040年代頃にはそういった状況になったら、タワマン嫌いのネットの人々はその時大喜びするんだろうな、と今から予想しておきます。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。

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