文科省の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」が今年8月に策定した中間まとめでは、少子化が加速する地域の高校への対応策に言及し、中山間地域や離島の小規模校で教師に代えて職員を配置することを可能とする案や遠隔授業の要件緩和やオンデマンド型の通信教育を可能とする制度改正などの必要性を打ち出した。文科省としては一歩踏み出した形だ。
だが、もはや各地域に対応をゆだねて解決できる段階は終わった。中山間地域や離島に限った問題ではないのだ。出生数を増やす手立てはなく、統廃合も最終解決策とならないのである。こうした現実を見る限り、小中学校や大学を含め「学校」というものの在り方を根本から見直すしかないだろう。
高校の場合、統廃合やその前段階の小規模校がもたらす弊害はさまざまあるが、生徒にとっては通学の不便さが最大の課題だろう。大都市を含めて公共交通機関の縮小が始まっているのだ。子ども数が極端に減った時代ともなれば、「毎日決まった時間に学校に通う」ということも常識とは言えなくなるだろう。いずれは、各県に残った少数の高校の中から、進学先を選ばざるを得なくなる時代がやってくる。
人口が激減する中でいかに学びやすい環境を創るか
段階を踏む必要はあるが、そうした時代に備えるには、全寮制や通信制の高校を増やすことが究極の選択肢となりそうだ。
むろん、学校は友人をつくる場所でもある。これは通信制では難しい面もある。しかしなから、そうした課題は学校行事を積極的に用意し、生徒が集まる機会を増やせばかなり解決する。
最近、一部の通信制高校が人気だ。公立でも不合格者を出すところがあるほどだ。受験予備校でオンデマンド授業が定着し、通信教育への抵抗感が薄らいできているのである。コロナ禍でオンライン会議の便利さに多くの人が気づいたこともあり、保護者の理解も進んできている。文科省や専門家より、国民の意識の変化のほうが早そうだ。
急速に少子化が進む人口減少社会においては、「学ぶ」ということを相当柔軟に捉えなければ、学校そのものが成り立たなくなる。