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「悩みを抱え込まず、共有してほしい」 介護者が自分の悩みを打ち明ける「介護者カフェ」を開いた東大卒住職の思い

介護者がそれぞれの思いを語る実際の「介護者カフェ」の様子

介護者がそれぞれの思いを語る実際の「介護者カフェ」の様子

2つの基本ルールは「他言無用」と「聴く姿勢」

 50代の男性参加者・Aさんは次のような経験を話してくれた。

「私は自宅で父親の介護をやっているのですが、つい怒鳴りつけてしまったり、手をあげてしまいそうになったりしたこともあります。そういうことは、介護の経験がない人にはなかなか言えません。アドバイスがほしいわけじゃないんですよね。ただ聞いてもらいたいだけなんです」

「他言無用」と「聴く姿勢」、カフェではこの2つを基本のルールとしている。下村氏が言う。

「身内の介護はプライベートな話題のため、誰にも話せずに抱え込んでしまいがちです。周りに広まったら恥ずかしいとか、軽蔑される、と思ってしまうかもしれない話題でも、このカフェでなら話せる。そうした安心の担保として、ここで出た話題は他言無用としています。また、常に聴く姿勢を持ってもらう。どんな告白でも頭ごなしに否定することなく、最後まできちんと聴く。これを参加者の皆さんに徹底してもらっています」

 よく言われるように、介護は突然、始まる。つい最近まで元気だった老親に衰えが目立つようになり、ある日突然、実生活に支障をきたすようになる。もちろん、その日常に目を光らせていれば、様々な兆候があるのだろうが、家族にはそれぞれの生活があり、見過ごしてしまう場合が多い。

 少しくらい物忘れが激しくなっても、「うちの親は大丈夫」と、心のどこかで思っていたい。そうこうしているうちに、迷子になって帰って来られなくなったり、ゴミ出しのルールを守れなくてご近所に迷惑をかけたりと、顕著な症状が現われ始める。慌てて自治体の老齢福祉課などに相談して、必要であれば要介護認定の手続きが行なわれ、介護生活が始まる。

「日本の公的な介護保険制度は家族介護が基本に置かれているように感じます。初めて家族を介護する方は慣れない生活でどうしても疲弊します。ところが、そうした苦労はなかなか表に出てきにくく、一人で抱え込む人が大勢いるように思います。そうした方たちに、お寺を使っていただければと、『介護者の心のやすらぎカフェ』を2016年の11月に始めました」(下村氏)

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