コロナ前は毎回15~20人ほどが集まっていたが、コロナ禍では三密を防ぐために、Zoomでのリモート開催となった。感染状況を見ながら徐々にリアルの集いを再開したという。
「今は原則として奇数月は寺院内で、偶数月はオンラインでの開催としています」(下村氏)
なぜ、お寺の住職である下村氏は、このような取り組みを始めたのだろうか。
「東大まで出たのに、もったいない」と言われたが…
下村氏は、東京大学医学部健康科学看護学科を卒業し、そのまま母方の実家である「香念寺」を継いだ。
「幼少期は別の場所にいたのですが、6歳からずっとこのお寺で育ちました。父親は普通のサラリーマンです。私が17歳の時に先代の住職である母方の祖父が81歳で他界したのがひとつのきっかけだったかもしれません。2月の寒い日に風呂で息を引き取っていたのですが、前の年の終わりに転んで頭を打ったのが影響した可能性もあります。
そうした経験もあったので、大学では実生活の支えになるようなことを学びたいと思い、看護学科を選びました。卒業の際には大学院に進むことも考えましたが、早々に住職になったほうがいいと考え、卒業後まもなく香念寺を継ぐことにしました」(下村氏)
周りからはしばしば「東大まで出たのに、もったいない」と言われることがあったという。
「実際、30代の半ばまでは、東大で学んだ分野に進むことなく実家を継いだことについて悩み続けました。ただ、34歳の時に、浄土宗総合研究所の研究スタッフとして、お寺を通した老いにまつわる社会貢献活動について研究することになりました。大学で学んだことを、お寺でも活かせるのではないか。そうした思いが、今の介護者カフェに繋がったように感じています」(下村氏)