遺族のために書き留めておく「遺言書」は、本人が存命中であれば、何度も書き換えることが可能。状況の変化に応じて書き換えることで、相続トラブルを回避することもできるだろう。しかし、一方で書き換えがトラブルを招くこともある。
女性・Aさん(82才)はいくつになっても金を無心する長男に愛想を尽かし、長女と次女に全財産を相続するよう遺言書を書き換えた。ところが自室に保管していた遺言書を、勝手に上がり込んで物色していた長男に見つかってしまったのだ。
「長男はものすごい剣幕で長女と次女に“どうやって母を丸め込んだのか!”と連絡してきたそう。2人とも精神的に参ってしまい“お兄ちゃんにも渡すようまた遺言を書き換えて”と言ってきたので、仕方なくそうしました……。遺言書を見られたのは人生最大の失敗で、法務局で保管してもらえばよかったと悔いばかり残ります」(Aさん)
実際に遺言書を書く際には、細かなルールにも気をつけたい。自筆証書遺言の作成に挑んだ女性・Bさん(75才)はルールを知らなかったゆえ、やり直しを余儀なくされた。
「70才を機に終活の一環として書き始めました。自分の悪筆が嫌だったのでパソコンで作って最後にサインして、大満足で娘に報告したら、“全部自分で書かないと無効だよ”と言われて、書き直すことになりました」(Bさん)
ただし自筆でさえあれば、用紙の種類やサイズ、ペンの種類などは問わない。円満相続税理士法人の税理士・公認会計士の中岡倫邦さんが解説する。
「遺言書が大学ノートだったり、チラシの裏だったケースもある。とはいえ鉛筆やシャープペンシルで書くと時間とともに字が薄くなったり、改ざんされるリスクが増すので避けるべきです」