トラブルを招きやすい自筆証書遺言
遺言書の証人業務を受けている夢相続の曽根恵子さんは「そもそも自筆証書遺言はトラブルを招きやすい」と語る。
「自筆の遺言書はすべて自分で書き、氏名、押印、日付も必要です。ただし手書きの場合、遺言書で相続が不利になる子供から“こんな内容の遺言書をお母さんが書くはずがない。姉に書かされたんじゃないのか”などと真偽を疑う声が出やすい。
一方の公正証書遺言なら本人の意思であることを公証人が確認するので、真偽をめぐるトラブルは生じにくい」
また、自筆証書遺言の場合、書き換えた際に「本当に本人の意思で行ったか」が俎上に載せられやすいことも指摘される。
「診断こそ出ていないものの認知症のような症状が出始めた親が遺言書を書き直した場合、遺言で相続が不利になる子供が“判断能力が低下していたから書き直しは無効だ”と訴える可能性があります。それを避けるには書き直した際の状況や病状などについて、かかりつけ医の診断書をもらっておくことがおすすめです」(中岡さん)
行政書士の明石久美さんは「理由や証拠保全」を提唱する。
「書き換えるか否かにかかわらず、自筆の遺言書を書く際には、この内容にした理由を書いたり、念のためその様子をスマホの動画や写真で撮影しておけば、本人の意思で遺言を作ったという証拠になります」
ただし、実際に認知症の診断が下っていれば無効となる場合があり、トラブルが発生することもある。それでも書き換えたければ、第三者が関与する公正証書遺言を選ぶことが賢明だ。