気をつけるべき「撤回」と「具体的な支持」
また、どのような遺言書でも共通して気をつけるべきは「撤回」と「具体的な指示」を明示すること。明石さんが指摘する。
「遺言書を書き換える場合、以前の遺言書と重複したり、矛盾があるような部分は新しい遺言書が優先されますが、内容が重複しない部分は、以前の遺言内容がそのまま有効になります。
古い遺言書と新しい遺言書にそれぞれ有効な部分があると混乱を招くので、書き換える際は、自宅等で保管している自筆証書遺言は破棄したうえで作成し、法務局や公証役場に保管されている場合は“○年○月○日作成の遺言書は撤回する”という一文を入れてください」
中岡さんも書き換えの際は「撤回」することをすすめる。
「遺言書を書き直した後、複数の遺言書が存在するとややこしくなります。たとえ内容の一部を修正する場合でも、以前の遺言書を撤回した上で一から書き直すことをおすすめします」
母親が書き換えた遺言トラブルの真っただ中にいるCさん(58才)はその理由を「遺産分割割合について、具体的な指示がなかった」ことを挙げる。
「遺言書には、“遺産は兄妹2人で仲よく公平に分けなさい”としか書かれていなかった。でも遺産は預貯金だけでなく家や土地もあるので、どうすれば“仲よく公平”になるのかわからない。兄は都合のいいように解釈して“自宅はおれが公平にもらう”と言い出す始末で、母の意思がわからず困っています」(Cさん)
当初は平等に与えるつもりだったが気持ちが変わり、子供の相続に差がつくような遺言内容に書き換える場合は、「遺留分」にも気をつけたい。
遺留分とは、法律で定められた最低限の取り分のこと。たとえ遺言書を「1円も渡さない」と書き換えても、遺留分を奪うことはできない。