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タワマン住民に浸透する「サピグノ信仰」 エリート塾のブランド力に吸い寄せられる人たちで湾岸地区は“塾銀座”状態に

 取材をしていても、たしかにタワーマンション住民はサピックスに子どもを入れたがる傾向があるように感じる。「サピックスにみんなが入れるから、うちは差別化をしたくてグノーブルに通わせる」という話も実によく耳にする。グノーブルはサピックスの講師たちが独立して立ち上げた塾で、サピックスと同じく難関校対策に最適化された優秀なメソッドの塾である。この「サピグノ信仰」が強い家庭が目立つのが、タワーマンションが密集する地域の特徴だ。

 興味深いのは、彼らはサピックスやグノーブルといった難関校対策のエリート塾に子どもを通わせたがるが、実際は中堅校狙いということも多い点だ。塾には得意不得意がある。中堅校に入れたいなら中堅校対策を得意とする塾を選べばいいが、そうしないのは、塾にブランドとしての付加価値を求めているからだろう。難関校の合格実績が高い塾はブランドイメージが高まる。そういったブランドステイタスを「サピグノ」に感じ、引きつけられる人たちがいるわけだ。

「塾銀座」になっている白金高輪や豊洲

 タワーマンションが建ち並ぶ場所には、サピックスやグノーブルのような難関校対策の塾が多いのが特徴だ。

 白金高輪に「フォトン算数クラブ」という算数塾がある。御三家などの難関校への合格実績が高く、入塾希望者が殺到し、東京でもっとも入塾のハードルが高いといっても過言ではない。自由が丘、日本橋にも校舎があるが、それらの校舎に比べて、白金高輪校は近所の子どもたちが徒歩で通塾する割合が多いそうだ。白金高輪はタワーマンションが建ち並ぶので、子育て世帯も多いのだろう。グノーブルも白金高輪の校舎は生徒が増えていると聞く。また、算数に強く、最難関校対策で定評があるエルカミノを取材した時も、白金高輪校舎を指定された。

 豊洲もそうで、東京でも屈指の「塾銀座」になっている。サピックス、四谷大塚、早稲田アカデミー、日能研といった大手から、エルカミノのような中小の難関校対策に長ける塾も存在するし、個別指導塾もずらりと軒を連ねる。

 東京個別指導学院に取材をする際は、先方から豊洲校を指定された。その校舎が入っている雑居ビルのエレベーターに乗ると、英語で会話をする小学生たちと一緒になった。目的の階に到着し、私が「開く」のボタンを押して、先に出るように促すと「ありがとうございます」と日本語に切り替えて礼を言ってくれた。躾がされた子たちに見える。豊洲は都心にも出やすいが、共学の最難関校、渋谷学園幕張がある海浜幕張にも通いやすい。人気の中高一貫校に通いやすいエリアにあるから受験熱は高まる。

「タワーマンションは子育て世帯をターゲットにしているので、キッズスペースなどの共有施設が充実しており、各家庭のつながりが強いんですよ。中学受験経験者のママやパパたちが“子どもも受験させる?どうする?”という会話などをきっかけに、他の人たちも子どもの受験を意識し出します。それにマンション内には中高一貫校の制服を着たお子さんも歩いている。その姿を見ると“うちもさせようか”と思う人たちが出てくるわけです」(塾関係者)

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