「ワンランク上のステージに案内します」
中学受験の塾は、受験対策をすることを「思考力や表現力を高めて、将来役に立つ力を育てます」と謳い、私立中高一貫校は外国風の外国語教室や豪華な実験室を作って「インスタ映え」を狙い、「平均よりも上のステージにお子さんとあなたを案内します」というメッセージを発する。
以前、インタビューした地方出身の女性は、子どもを中学受験させ、名門中高一貫校に通わせている。同じ学校に、大物国会議員や大企業の経営者の子どもが通っていると恍惚とした表情で話した。セレブリティの子どもが通う学校に自分の子どもが通うことで、自分たちの階層が上がったように感じているわけである。小学校受験は縁故、つまり卒業生の子どもが有利になることあるが、中学受験は学力一本勝負だ。なんらコネクションがない庶民でも、塾に入れ、勉強をさせ、試験に受かれば、ハイブランドが手に入るのだ。既得権がない人たちが「これを手に入れれば、私は平凡ではなくなる」とステイタスを欲したときに、中学受験を選択するのは当然だろう。
いうまでもなく、子どもを名門校に入れ、セレブリティの子息たちと同級生にさせても、自分がワンランク上に行くわけではない。
ただ、一部には子どもの同級生にセレブリティの子女がいることで自分もランクアップしたと「勘違い」をする人たちがいて、それに対する反発があっても当然ではないだろうか。
※第4回は12月16日に公開予定です。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)では小説『ボリュゾっていうな!~ギャルママが挑む“知識ゼロ”からの中学受験ノベル~』を連載。