「タワーマンションに住んで、子どもに中学受験塾をさせる」。こういったライフスタイルはしばしば小説やマンガなどの作品にも登場したり、ウェブで議論の的になったりする。そのような選択をした親たちの胸の内はどうなのか。著書『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「タワマンと中学受験の関係性」の第4回。【全6回。第1回から読む】
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「タワーマンションに住んで、子どもに中学受験塾をさせる」。こういったライフスタイルはなぜ反感を買うのか。タワマン文学の書き手である窓際三等兵氏原作によるコミックス『タワマンに住んで後悔してる』(KADOKAWA、漫画・グラハム子)は中学受験業界でも話題の一冊だ。タイトルを見れば分かるように「タワマン住民が後悔すること」を見たいという読者のニーズも垣間見える。そこには明らかな反発がある。
この作品の主人公である舞は、夫が損保会社の社員で子どもが一人いる専業主婦だ。舞は、九州から夫の転勤で東京都内のタワーマンションに引っ越したことで「今日から始まるんだ 私たちの“平凡じゃない”幸せな生活が」と思う。ごく普通の主婦がなぜ「平凡じゃない」という自意識になるのか。その理由を探るべく、タワーマンションに住む女性に訊いてみた。
2010年に23区内のタワーマンションをペアローンで購入したA子さん(40代前半)。中堅メーカー勤務で、元々はエンジニアだったが、今は営業職である。
彼女は『タワマンに住んで後悔してる』を読んだ感想をこう話す。
「このコミックスに納得できない部分もあります。3組の家族が登場するんですが、まず、商社マンと専業主婦で子どもがいる家庭が湾岸地区のタワマンの最上階に住んでいる設定は不自然です。うちのマンションの最上階あたりに住んでいるのは上場企業の経営者たちですね。私がエレベーターの中で挨拶しても無視をしますよ。彼らは会社でトラブルがあると記者に追い回されるのでセキュリティがいいタワーマンションに住むんです。戸数が多いからどの部屋に住んでいるか分かりませんしね。同じ理由で有名な芸能人も住んでいますが、挨拶すると爽やかな笑顔で返してくれます」
そういったセレブリティとは付き合いがあまりないから別にいいという。問題は同世代の子どもを持つママ同士の交流だ。
「コミックスに出てくるみたいに、階層や海外在住経験でマウンティングしてくるような人はいません。中層や低層階の方が広い間取りの部屋が多いですし、高層階だからいいということはないです。そういった漫画チックなマウンティングをしてくる人はいないんですが、違う意味でストレスになるママがいますね」