忘年会の言い出しっぺなのに自分が行きたい店を羅列するだけ
こうした経験を福岡でした後、今度は東京でのこと。羽田空港から京浜急行線に乗ったのですが、混雑しています。すると、巨大な荷物を持った女性がドアのすぐそばに踏ん張っているのです。
駅でドアが開くと多くの人が乗ってくるのですが、この方はガンとして動かない。彼女と彼女の荷物が通路を塞いでいるため、乗ってきたお客さんは車内の中のほうへ行きにくく、“足止め”をくらった格好の人たちがどんどんドア付近に密集していきます。それでも彼女はイヤフォンをつけ、スマホを見ていることもあってか、周囲のそうした状況にはまるで気が付きません。
車内の中央部分には広々とした空間が広がっているのに、こういった時に「少し中に入ってもらえますか?」と言えないのが日本人の奥ゆかしいところ。結局彼女は一切動くことなく空港から品川駅までそこに陣取り続けたのでした。
自分の都合しか考えない人がいるために、周囲が振り回される。こうしたことは知人でもあります。「コロナが明けたから久々に忘年会しようよ! 3日後に」とメッセンジャーグループで言ってくる男性がいました。言い出しっぺなのだから店のアテでもあるのかと思ったら、自分が行きたい店を羅列するだけ。
しかも、候補として挙げられたのはどう考えても3日後に予約が取れるような店ではない人気店ばかりです。このグループの中の最若手の男性が予約役を買って出てくれたのですが、予約がいっぱいだと報告すると「いや、その店は詰めれば入れるはずだ」や「私の名前を出せばなんとかなる」などと勝手なことを言う。だったら自分で予約してくれよ!とそのグループ全員が思ったのは間違いありません。
この手の「とにかく気が利かない人」ってのはどうすればいいかといえば、仕事などで付き合う必要がないのであれば、「縁を切る」の一択でOKでしょう。皆で示し合わせて縁を切っても「あれ、最近あいつらから連絡ないな。どうしたのかな。仕事が忙しいのかな」程度のことしか思わない鈍感な方でしょうから、恨まれる心配はありません。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。