認知症対策も重要に
親が認知症を患うと、老人ホーム入居に際して自宅売却が制限され、空き家のまま塩漬けにしなくてはいけなくなるリスクがある。その前に対策を講じる必要があるのだ。空き家問題に詳しい司法書士の旭祐樹氏が指摘する。
「認知症などで親の意思能力が失われていると判断されると、財産保護の観点から、子による自宅の売却などができなくなります。そうなった場合、『法定後見制度』を利用して、家庭裁判所が選任する弁護士などに財産管理をしてもらう選択肢がありますが、毎月3万~6万円ほどの費用がかかる。
その点、親が認知症になる前に子などを後見人に指名する『任意後見制度』を活用したり、家族に資産の一部を信託する『民事信託』を行なっておけば、親が認知症になった後でも子が実家を処分できます。手続きは必要に応じて司法書士など専門家のサポートを受けましょう」
相続放棄も選択肢
親が亡くなったら、まずは「実家を相続するか」を決める。
「実家を相続することによる負担が大きければ、『相続放棄』も選択肢になります。ただし、特定の不動産のみの放棄はできず、預貯金やその他の不動産もすべて放棄することになるので注意が必要です」(旭氏)
相続放棄する場合、相続が決まったことを知ってから原則3か月以内に、被相続人(故人)の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申述書を提出しなくてはならない。
(後編に続く)
※週刊ポスト2023年12月22日号