「チャットGPT」は今年のユーキャン新語・流行語大賞のノミネート30語に入るなど、世間で大きな注目を集めたが、AIの技術進歩が加速、各方面でその応用・実用化が実を結び始めている。
グーグルは12月6日、次世代高性能AIとなる“Gemini(ジェミニ)”を公開した。チャットGPTではインプット側はテキストや音声情報などに限られるのに対して、ジェミニはこうした文字情報に加え、画像や動画まで利用できる。いわゆるマルチモーダル対応が可能となり、総合的にGPT-4(最新バージョンのチャットGPT)を超える性能評価を得ているようだ。
そうした中で、ある米国AI開発ベンチャー企業が中国株式市場で大きな注目を集めている。テキストを入力すると動画を生成してくれるAIソフト“Pika(ピカ)”の開発を進めている米国Pika Labsは11月28日、4か月以上にわたる社内テストを経て大きなレベルアップがあったとして、正式に初期試作版を開放すると発表した。
同社は、3回にわたる資金調達に成功しており、5500万ドルの開発資金を手にしたとしている。投資家たちからは企業価値は2億~3億ドルと評価されており、GitHubの前CEOであるナット・フリードマン、オープンAIの取締役会のメンバーでQuora創業者であるアダム・ディアンジェロ、オープンAIの創業に係わったアンドレイ・カルパシーなど、AI業界の著名人たちがエンジェル投資家として資金調達に参加している。
「自分たちならもっと優れたAIソフトができる」
中国本土メディア報道(11/30、澎湃新聞、12/12、中国新聞ネット浙江など)によれば、Pika Labsは2023年4月に設立された従業員わずか4名の企業だ。創業者の一人である郭文景(Demi Guo)女史はハーバード大学で学位を所得、修士課程を修了。スタンフォード大学AIラボのドクターコースに進み博士号を取得したエリートである。学部学生時代にはMetaでAI研究部門の技術者として働いた経験もある。
創業のきっかけは2022年末、AI動画編集ソフトを開発する米国Runway社が開催した第1回AI Film Festivalに、もう一人の創業者となる同僚の孟晨琳(Chenlin Meng)とともに作品を制作し、応募したことだ。優秀作品には選ばれなかったが、作品を作る際に使ったRunwayは使い勝手が悪く、自分たちならもっと優れたAIソフトができると確信し、2人そろって大学を辞めて起業したそうだ。
Pikaは単なるプロたちのための映画編集、作成ソフトではなく、一般のユーザーが簡単に質の高い画像編集、作成ができるようになることを目的に設計されている。目指す市場の規模は大きく、アドビ、Runawayなどの大手と激しい競争となったとしても勝ち残れるチャンスがあるかもしれない。