業務の標準化が遅れている介護業界の課題
こうした改革の裏には、同社なりの試行錯誤があったようだ。久保氏が言う。
「弊社は先代が2009年にこの業界に進出してできた新しい会社です。親会社が建設業で、そこからの分社化という形でした。後発ではあるのですが、その分、介護業界の常識を冷静に分析できたのかもしれません」
同社では、老人ホームやデイサービスでの作業内容を10分刻みでリストアップ。時系列に並べた「サービスシフト」を作って作業の見える化を図り、すべてのスタッフが最低限やるべきことを整理しなおした。久保氏が続ける。
「介護は感情労働と言われます。個人のスキルや優しさのような部分に頼ってしまい、業務の標準化が遅れているように思えたのです。弊社では6年前から、ひとつひとつの作業を見える化した“サービスシフト”を活用することで、スタッフ全員のスキルを一定以上に保つ取り組みを続けてきました。このサービスシフトがあったからこそ、11時間勤務、10時間労働の週休3日体制を実現することができたのだと思います」
久保氏は今後も、働き方改革を進めていくつもりだと強調する。
「正社員の住宅補助の充実やボーナスを3回標準から4回標準にすることを目指しています。またココロココカレッジという社内教育制度の構築でスキルアップ・スキルの見える化をさらに進める仕組みを構築中です。やれることはまだまだあります。魅力のある職場体制を作ることができれば、人手不足は自ずと解消すると信じています」
団塊世代全体が後期高齢者となる2025年はもうすぐそこだ。介護サービスを必要とする人が増え続けるなか、人材確保のための仕組みの整備が急務であることは間違いない。(了)