様々な業界で「人手不足」が叫ばれているが、とりわけその傾向が顕著とされるのが介護業界だ。公益財団法人「介護労働安定センター」が全国の介護保険サービス事業者(1万8000の事業所と5万4000人の労働者)を対象にした調査(2022年10月)によると、人手不足を感じる事業所は全体の66.3%にのぼった。
厚生労働省の試算でも、2023年度に約22万人、2025年度に約32万人、2040年度に約69万人の介護職員が不足するとされている。都内で認知症デイサービスを運営する男性は次のように語る。
「働き方が多様化したこともあり、特に若い世代では、土日を休みにしないと人が集まりません。弊社のデイサービスも、今年から土日祝日は休業することにしました。利用者さんを平日に振り分けるなどの作業で、現場は大混乱でしたよ」
利用者がいても、ケアするスタッフがいなければ現場の仕事は回らない。人手不足のために入居者数を制限せざるを得ない老人ホームも少なくない。
そうしたなか、注目されているのが「株式会社ココロココ(愛媛県四国中央市)」だ。同社は職員の勤務体制を完全週休3日にすることで若い世代の雇用を伸ばしたという。同社常務取締役の久保慶高氏に聞いた。
「弊社は、住宅型有料老人ホームを8施設、機能訓練特化型デイサービスを2施設運営しています。職員数は171人で、そのうち約140人が正社員です。今年も新卒社員を10人採用しました」
10時間労働の3シフト制にする“大胆な働き方改革”
ココロココが週休3日を試験導入したのは3年前の2020年だ。大胆な働き方改革に困惑する社員もいたという。久保氏が続ける。
「週休2日から週休3日に変えたわけですが、全体の労働時間を減らすわけではありません。それまでは9時間勤務、8時間労働がベースだったのですが、これを11時間勤務の10時間労働に変更したのです。1日の労働時間を増やすことで、年間の休みを163日に増やしました。5日間の有給休暇を設定しているので、実際には年168日間の休みを取ってもらうことになります。365日のうち46%が休み。もちろん、給料は一切減らしませんでした。ただ、それでも急激な変化に不満や戸惑いの声もあり、働き方の変化を理由に辞めていった職員もいました」
その後、徐々に新しい働き方が浸透しているという。以前は16時出社で翌朝9時に勤務を終了し、その日を1日休みにするといういわゆる2交代制の夜勤シフトも敷かれていたが、週休3日体制にしてからは、どの時間帯も11時間勤務の10時間労働を徹底している。慣れれば、この方式のほうがワークライフバランスを保ちやすいと、職員からの評判も上々になってきたという。