相続は“夫がやるべきこと”とどこか他人事になっている女性もいるのではないだろうか。とはいえ、女性の寿命が長い時代、夫に先立たれたらどうなるか。実は、相続は「夫から妻へ」よりも、「母から子へ」渡るときの方が、金銭的にも、精神的にも大きな負担になりやすい。どう備えるべきなのか。
日本人の平均寿命は、2022年の厚生労働省の統計によると、男性81.05才、女性87.09才。つまり多くの夫婦は、夫よりも妻の方が長生きする可能性が高い。
「両親はすでに他界し、夫にも先立たれた後、両親と義実家、そして夫から受け継いだ財産を、子供や孫にどうやって残そうか」──そんな「おひとりさま」の相続問題は、実に悩ましい。静岡県に住む女性・Aさん(69才)が話す。
「2年前、夫からお金と自宅を相続しました。遺族年金もあるし、私も定年まで働いていたので、お金には困らない生活ができています。ですが、夫から相続した分と自分の財産の総額は6000万円以上。私が死んだら、ひとり娘が多額の相続税を払わなければいけなくなります。よかれと思って財産を残したのに、かえって損させるんじゃないかと思うと……」
こんな悩みを抱える「女性のおひとりさま」は、今後ますます増える可能性が高いと、税理士でマネージャーナリストの板倉京さんは話す。
「実際、いまも『母からの相続』で困っている子供世代からの相談が増えています。特に多いのは、ひとりっ子で自分以外の相続人がおらず、手続きや相続税の支払いをすべてひとりで背負わなければならないケース。未婚化や少子化の拡大が避けられない以上、こうした問題は今後も増えていくはずです」