特に資産家というわけでなくても、普通の家庭でも起こるのが相続トラブル。相続を“争続”にしないためには、やはり遺言書をつくっておくべきだが、どのように準備すればよいのだろうか。
まずは、相続人の有無と人数を明確にすること。税理士でマネージャーナリストの板倉京さんが話す。
「誰に何を渡したいのか、理由もつけて細かく明記するべきです。株式や預金などは変動するため、“誰に○円”などではなく“誰に○割”と、割合で書く方がいい。絶対に避けるべきなのは“仲よく分けてください”といったあいまいな指示です」(板倉さん・以下同)
遺言書に「あいまいな言葉」は不要。相続させる人の名前は愛称などを使わず、戸籍通りのフルネームで書き、生年月日も添えて必ずその人だと特定できるようにすべき。財産も、銀行の口座番号や不動産登記簿の住所など、詳細な情報まで明記すること。
事実婚の相手や親しい友人など、法定相続人ではない人に財産を残したい場合(遺贈)も、遺言書は有効だ。
「その場合は、遺言書の内容をすべて単独で手続きする権利を持つ『遺言執行者』を、遺言書の中で指名しておくと手続きがスムーズになります。ただし、法定相続人の遺留分は考慮しておくことをおすすめします」
遺言の内容が法定相続人の遺留分を侵害していると、法定相続人から遺留分侵害額請求を起こされる可能性もある。ベリーベスト法律事務所の弁護士・遠藤知穂さんが解説する。
「後から何度でも書き直すことができるので、元気なうちに遺言書をつくっておいて、その上で子供たちなど相続人を集めて、分割割合や相続の内容を共有しておくのがベスト。いわば“遺産分割協議の前倒し”です」
認知症などで判断能力が低下してからでは、法的な効力のある遺言書をつくることはできない。だからこそ、元気なうちに自分の意思を残しておくことが大切なのだ。