人生の行き着く先、それがお墓。実際に墓石を作る際、寺院から石材店を指定されるケースがある。指定に反して安い石材店に頼むのはルール違反なのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
先日、父が亡くなりました。父が生前に購入していた墓地があるのですが、その寺院ともめています。
父の死後、墓石を作るためにいくつかの石材店から見積もりを取りました。ところが、その寺院には指定石材店があり、そこで墓石を作らなければダメだと言います。「指定石材店の墓石は高額なので、ほかの安価な石材店に頼みたい」と寺院に相談しても聞いてもらえません。指定石材店に依頼するしかありませんか。(奈良県、65才女性)
【回答】
墓地を購入されたとのことですが、墓地の購入とは正確には「寺の墓地内の特定の区画において、遺骨を納める施設を設置し、墓石を建てて墳墓として使用する権利(墓地使用権)を取得した」ということです。
お寺の墓地を使用できるだけですから、土地所有者のようにその区画を自由に使うことはできず、墓地を使用できる条件が問題になります。墓地使用権を取得するとき、お寺と使用契約を締結したり、墓地の管理規則をもらっているはずですから確認してください。
お寺の言い分から察するに、使用契約などで、墓石等の建墓工事を特定の業者に発注することが条件になっていると思います。墓地全体を管理するお寺にとっては、宗教施設にふさわしい雰囲気と調和のある景観の維持も重要です。信頼できる業者を指定することは理解できることです。
墓地によっては、全体の造成工事費用を業者に負担させ、その代わり、その業者に建墓工事の独占を認めている例もあるようです。そこで、墓地使用者には、指定業者による建墓工事の施工を承知して契約してもらう必要があるのです。
お父さんがそうした契約をしていた場合は、従うしかありません。経済的に困難な場合は、お寺と相談してください。死者の慰霊は大事な宗教活動です。相談にのってくれることが期待できます。