なお、こうした業者の指定は、墓地使用の条件として特定業者への注文を義務付けるもので、いわゆる「抱き合わせ販売」の一種です。ただし、独占禁止法は「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること」を不公正な取引方法として禁じているので、もし該当すれば建墓業者を指定する契約条項は無効です。
しかし、不公正な取引方法というためには、「不当」であり、「強制」されたことが必要です。抱き合わせ販売は世間で見られる取引形態であり、それだけで不当とはいえません。そのお寺の条件が嫌なら、ほかの墓地に変更すればよく、業者指定条件を「強制」されたともいえませんから、不公正な取引方法に該当しないと思います。
業者指定の条件がない場合は、墓地の宗教的雰囲気を壊すような墳墓でなければ、使用者の依頼する業者による工事をお寺は受け入れる義務があります。ただし、お寺が墓地を管理しているので、工事の予定等については事前に協議する必要があります。
【プロフィール】
竹下正己弁護士/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
イラスト/大野文彰
※女性セブン2024年1月4・11日号