人民元の対ドルレートの動きが激しくなってきた。人民元には、2つの為替市場がある。一つは本土市場で、もう一つはオフショア市場である。前者は国内で流通する人民元、外国通貨間の取引市場であり、後者は海外で流通する人民元、外国通貨間の取引市場である。
現行為替制度では、貿易決済など(国際収支上の経常勘定)で人民元が使われた場合には自由に海外送金できるが、投資目的など(国際収支上の金融収支、資本移転など収支)で人民元を使い、それを海外に送金することには大きな規制がかけられている。
中国はアジア通貨危機の経験から、欧米の金融機関に対して強い警戒感を持っている。資金量が多く、取引技術に長けた彼らが自由に取引したならば、金融市場はかつてのタイ、インドネシアなどのように、彼らに支配されてしまうリスクが高い。とはいえ、人民元の国際的な利用量を増やし、中国の貿易業者、海外投資者の為替リスクを減らし、世界における経済金融支配力を高めたいといった目標もある。
そうした理由から、中国は香港など一部地域・国の金融市場において人民元業務を認めている。
同じ人民元を対象とする取引が、国内、海外別々に存在している。人民元の借入金利、預金金利に差があり、為替レートにも差がある。この矛盾を突いて利益を得ることはできないだろうか?
欧米系金融機関、とりわけアグレッシブな運用を行うヘッジファンドは果敢に挑戦を続けている。