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【漁師をなりたい職業へ】「東京チカラめし」「金の蔵」大量閉店のサンコーが水産業に進出 社長が語る使命感とビジネス面での勝算

サンコーが所有する漁船「辨天丸」

サンコーが所有する漁船「辨天丸」

「日本の漁業を元気にしたい」という情熱

 漁業協同組合と業務提携し、サンコーは水産事業を立ち上げた。ただ漁業者から水産物を直接仕入れるのではなく、いまや前出の沼津我入道漁業協同組合のれっきとした組合員だ。自前の漁船を持ち、社員が漁に出たり、漁師を社員として雇ったり、飲食業界でも異例の動きを続けている。

 さらにマグロの目利きと加工に定評のある浜松市中央卸売市場の仲卸「株式会社海商」と、豊洲市場で7社しかない大卸「綜合食品株式会社」もグループに迎えた。サンコーは今、生産・水産卸・仲卸・加工・商品プロデュース・販売を一手に担う“水産事業のサプライチェーン構築”を目指している。

 大胆な試みの背景にあるのは、“日本の漁業を元気にしたい”という情熱だ。

「飲食事業だけを手がけていたときは、多少なりとも“食材は安く買い叩けばいい”という感覚がありました。しかし、水産事業の内側に入り、産地の疲弊などを知った今、もはや『買い叩く』という言葉を使う人は社内にはいません。私どもは危機感を覚えています。このままでは、魚を獲ってくれる人がいなくなってしまいます」

 使命感に加え、もちろんビジネスとしての見込みもある。

「地球全体の人口は増え続けています。魚を食べる人の数が増加していると考えると、水産業は世界的な成長産業になりえます。そして、和食はユネスコ無形文化遺産に登録されるほどの注目を集めています。産地の力と、魚をどうおいしく食べてもらうか提案できる飲食の力をかけ合わせれば、世界に打って出ることができるのではないかと考えています。それがひいては漁業を持続させる力にもなるはずです。『漁師をなりたい職業へ』それがサンコーのビジョンです。

 水産事業のサプライチェーンというモデルがやっと出来てきた手応えを感じています。種まきが終わり、いよいよ攻めに転じられそうで、ビジネスとして大変楽しみなところにいると思っています」

水産事業のサプライチェーンという秘策。起死回生の一手はどう出るか。

(了。前編から読む

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