1955年に“高級国産自家用車”として初代モデルが登場した「クラウン」。以後、15代にわたり国内専用の高級車マーケットをリードしてきた。そして昨年、新型となる16代目が発表された。基本の「セダン」に加え、セダンとSUVを融合させた「クロスオーバー」、スポーツSUVを標榜する「スポーツ」、そしてワゴンモデルの「エステート」という、4タイプのモデルがラインナップ。その先陣を切って2022年に「クロスオーバー」を発売、そしてこの秋には「スポーツ」、「セダン」の発売が始まった。
シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は、自動車ライターの佐藤篤司氏が、クラウンの中でも最も注目を集めているという「スポーツ」をレポートする。
スタイルこそが最大のセールスポイント
実は今夏、都内のスタジオでひと足早くクラウンスポーツを目の当たりにしていました。まるで極秘車両扱いのようにパネルトラックで運ばれてきたクラウンスポーツの初見は、独特のオーラを放っているように感じました。スタジオに搬入されると、さっそくなで回し、車内に乗り込み、終日たっぷりと実車とともに過ごすことができたのです。
もちろんその時点ではナンバーの取得は済んでいないため、公道を走ることはできなかったのですが、それでもクラウンスポーツの魅力の大半を、見ているだけで理解できたような気持ちになったのです。そうです、このクルマ、「カッコこそ命」と言ってもいいほどスタイリッシュというか、ストレートに「カッコいい」と直感するほどの仕上がりなのです。
とくにグラマラスなリアスタイルには目が釘付けです。大きく張り出したリアフェンダーと、キャビンの後端に向かってどんどん絞り込まれていくCピラー周辺とのバランスの良さ。結果的にはしっかりとした踏ん張り感と、アスリートのような力強さを感じさせるデザインになっていました。多分、これほどのガッチリとした安定感のある造形を持っている日本車は他にあまりなく、相当にセクシーで印象的なリアスタイルだと思います。
そんなリアからの見た目の良さを見ながら「ハンマーヘッドフェイス」と呼ぶフロントに回ると、低く構えたフロントマスクは実にシャープな印象。レンズの上下幅を薄くしたデイランプによって精悍さが強調されています。
一方、ウエストライン(ガラスの下のライン)から下にあるボディと大径のタイヤとの組み合わせは相当にボリューミーで力強い。そんなボディの上にはスポーツクーペのように見える小ぶりなキャビンが載っているので、余計に下半身のたくましさと安定感が強調されています。このグッと踏ん張りのきいた佇まいがクラウンスポーツをアスリート的に見せ、結果として「カッコだけじゃなく走りも凄いぞ」というアピールのように見えるのです。