多くの人が不安を抱える「老後資金」。“2000万円必要だ”という話もあれば、“もっと必要だ”という意見も聞こえてくる。そういった声が大きがゆえに、老後に貯金を使えずにいる人も少なくないという。『家計ノート』で知られる家計のカリスマ講師・細野真宏さんが、消費者代表の「コロちゃん(以下コロ)」との会話形式で老後資金について解説します。【全3回の第3回。第1回から読む】
どうすれば「貯金」を幸せに使うことができるのか?
細野氏:そもそも「貯金」は、自分のために頑張ってしているものなので、自分のために使うべきものなんだよ。ところが、日本ではあまりに「将来不安」を煽られ続けたせいで、そんな当たり前のことさえ忘れてしまっている人が多くなっているのが現実なんだ。
コロ:確かにそうだね。貯金は、自分が死んだら使えないのにね。でも、引退するまでは貯金を頑張る生活をしていたのに、引退後は急に貯金を取り崩す行動をするのは、真逆の行動だから意外と戸惑うかも……。
細野氏:まさに、そこがポイントなんだよ。現役世代の時は、「いかにお金を貯めるのか」が基本なんだ。
そして、引退世代の時は、「いかに貯金を取り崩すのか」が基本になるわけだね。あくまで貯金は、自分の将来のために備えて頑張って貯めていたものなんだから、自分が死ぬ時に使いきるくらいが、本当に理想的なお金の使い方なんだよ。
コロ:なるほどね。確かに貯金の意味を考えると、自分のために使い切るのが一番の幸せなお金との接し方だよね。でも、死ぬより前にお金がなくなっちゃったら、と考えると、やっぱり心配になるんだけれど……。
細野氏:そうだね、やみくもに使うとそういうことにもなり得るよね。だからこそ、計画的に貯金を取り崩していくことが重要になるんだ。
そこで、引退世代では、現役世代の時と同様に「家計管理」に大きな答えがあるんだよ。
キチンと家計管理の習慣ができていると、引退時に必要な生活費はどのくらいかを把握できるし、そもそも貯金がどのくらいあるのかを把握することもできるよね。
逆に、家計管理ができていないと、いつまでも漠然とした将来不安がつきまとうことになって、上手に貯金を使えずに死んでしまう残念なことにもなり得るんだ。
このように、家計簿を上手く活用して支出と収入のバランスを考えながら、「どのように貯金を計画的に取り崩していけばいいのか」が見えてくると、無理のない安心できる老後の生活を送ることが可能になっていくんだよ。
コロ:なるほどね~。つまり、現役時代と引退世代では、お金の接し方の意味合いが真逆になるほど変わるものなんだね。だから家計簿との向き合い方も変わってくるんだけど、どちらの場合でも家計の全体像を把握できているのかが重要になるんだね。
細野氏:そうだね。家計簿でキチンと家計のお金の流れが把握できるようになれば、現役世代では上手くお金を貯められるようになるね。そして、引退世代では上手くお金を使えるようになって、お金に振り回されない幸せな人生への近道になるんだ。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
細野真宏/経済ニュースをわかりやすく解説した“細野経済シリーズ”が、経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」を記録。首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、『家計ノート』が発売以来14年連続で完売するなど家計管理のプロとしても活躍。シリーズ最新刊は『細野真宏のつけるだけで「節約力」がアップする家計ノート2024』。
※女性セブン2024年1月1日号