しかし、労働条件明示書に、そのような業務範囲の区分がなく、単に訪問介護業務とか、介護サービスの提供と記載されているだけかもしれません。その場合、生活援助サービスとして掃除や片付けも従事するべき業務になります。
ゴミが多すぎて疲労困憊になるほどだと、作業量が過大で労働時間も長くなるはず。訪問介護員の仕事は請負ではないので、いわゆる36協定がなければ、約定の勤務時間以上の業務をする義務はありません。残業義務がある場合でも、ゴミの片付け等に時間がとられ、実労働時間が所定の労働時間を超えれば超過勤務手当を、さらに法定労働時間を超えていると、割増賃金も事業者に請求できます。
法の規定に従い、正規の残業代の支払いを求めれば、前述のように、事業者も要員補充などの対策を考えるようになるでしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年1月12・19日号