ショッピングモールには“サブカル”らしさが似合わない?
2000年頃、下北沢のヴィレヴァンにほぼ毎日足を運んでいたと語る男性・Bさん(36歳/音楽関係)は、ヴィレヴァンの変化について、次のように分析する。
「イオンモール、ルミネ、マルイ、ららぽーとなど、全国のデパートやショッピングモールに店舗を増やしたものの、こうした店舗の顧客は家族連れか、中高生を中心にした子どもたちも多い。当然のことながら商品のラインナップも変わってきます。2000年代初頭の下北沢店や高円寺店のような、ドラッグやオカルト、犯罪ものなどのアングラ系の本や“ザ・サブカル”な教養を要する書籍はなかなか置きづらいんでしょうね。
そうすると結局、ファンシーグッズや中高生向けの恋愛系のエッセー、安価なアパレル商品などが増えてしまう。かつては店内で流れている楽曲もセンスが良くて、下北界隈のインディーズバンドとか、そういうのをピックアップして紹介してくれていたんです。でも百貨店の店舗では音楽が流れていなくて、そこもヴィレヴァンらしさが失われた要因かもしれません」(Bさん)
Bさんは、サブカルと都市の結びつきが消えたのではないか、と続ける。
「やはりサブカルは街のイメージと結びついていて、そこに実店舗のヴィレヴァンがあることに意味があったと思います。今のZ世代には“サブカル”なんて使わないと思いますし、むしろ“エモい”ものが響いている。共感性に結びつくようなコンテンツや商品が支持されるなかで、マニアックなものや理解するのに時間がかかるようなコスパの悪い本、音楽は需要がなくなっているのかもしれません」(Bさん)
ヴィレヴァンは現在、オンラインストアのほか、同社がセレクトした楽曲が購入できる「ヴィレッジヴァンガードミュージック」、ハンバーガーショップ「ヴィレッジヴァンガードダイナー」など、新たな活路を模索している。かつてのファンたちの中には、消えゆくサブカル文化に寂しい思いを抱いている者もいるようだが、はたして今後のヴィレヴァンはどうなっていくのか──。