2025年に開催予定の「大阪・関西万博」のコストが膨らんでいる。当初の見積もりからほぼ倍増しているが、そこにどれほどの税金が費やされるのか──。経営コンサルタントの大前研一氏は「もうこれ以上、国が万博を支援すべきではない」と考える。大阪・関西万博への国と自治体のかかわりかたについて、大前氏が見解を述べる。
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日本維新の会が急失速している。各マスコミの世論調査によると、2021年の衆議院議員選挙後の政党支持率は維新が立憲民主党に大きな差をつけて野党1位になったが、最近は支持率が下がり続け、立憲民主に逆転されているのだ。
たとえばNHKの調査では、昨年5月は維新が6.7%、立憲民主が4.2%だったのに、同12月は維新が4.0%、立憲民主が7.4%となっている。
その最大の原因は、維新が誘致を主導した2025年の「大阪・関西万博」だ。国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する会場建設費が2018年の1250億円から2020年に1850億円となり、さらに昨年2350億円に膨らんで、当初の見積もりからほぼ倍増したのである。
また、会場建設費や「日本館」整備費など、万博に直接関係する国費負担の総額が1647億円に達し、それとは別に国や自治体、民間による会場周辺のインフラ整備費の総額が約9兆7000億円に上ることも明らかになった。
2021年に開催された東京五輪は、大会経費の総額が立候補時に見積もった7340億円から最終的に5倍の3兆6845億円に膨れ上がった。
大阪・関西万博も、いったいどこまでコストが膨張し、どれほど税金が注ぎ込まれるのか、皆目わからなくなり、旗振り役の維新に対する国民の批判が高まっているのだ。
大阪・関西万博の運営が赤字になった場合の対応も決まっていない。西村康稔経済産業相(当時)は国会で「国が補填することはない」と答弁し、維新の吉村洋文大阪府知事と横山英幸大阪市長は「万博は国の事業で、国が(不足分を)負担しない中、府市が負担するわけがない」(吉村知事)、「府市で(赤字を)カバーする認識はない」(横山市長)と述べている。
関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)も「経済界が資金を出すことは難しい」と穴埋めに否定的だ。
ただし、その一方で松本会長は経済界の入場前売券700万枚の販売目標が「ほぼ達成できている」と述べた。傘下企業などに“奉科帳”を回して買わせているわけだが、購入した企業に万博へ行く義理はない。つまり松本会長は万博を盛り上げるためではなく、地元におべんちゃらを言っているに過ぎないのだ。