しかし、すでに本連載(週刊ポスト2023年10月6・13日号)で述べたように、大阪府民・市民以外の国民の多くは単に経費を負担するだけで万博による経済的な恩恵は何もないし、そもそも万博は国ではなく都市が主催するのが通例だ。
にもかかわらず、開催地の首長が「国の事業」だから赤字になっても負担しないと言うのは本末転倒であり、責任逃れも甚だしい。もうこれ以上、国が万博を支援すべきではない。
今は能登半島地震の被災者の救済、被災地の復旧・復興が最優先であり、万博は二の次、三の次だ。
民間金融機関が企業の新規事業に投資する際は必ず事前にデューデリジェンス(適正評価手続き)を行ない、フィジビリティ(実現可能性)やリスクとリターンを精査して問題がないことを確認してから実行する。
しかし、国の大阪・関西万博への支援はそういう手順を踏まず、“やってる感”を出すため無節操に税金をバラ撒いているだけで杜撰極まりない。
したがって、大阪・関西万博への支援は、大失敗して税金の無駄遣いに終わると思う。だが、そうなったとしても、岸田文雄首相はもとより経産省など関係省庁の大臣と官僚、吉村大阪府知事、横山大阪市長といった当事者たちは、誰も責任を取らないだろう。
そして、そのツケは国民が払わされることになる。政治家や官僚の“無責任体制”を糺さない限り、血税の垂れ流しは続くのだ。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年2月2日号