故人と縁のある人に広く声をかけて、最後のお別れを──そんな葬儀の常識はコロナ禍を経て、大きく塗り替えられた。ごく近しい人だけに出席者が限られる「家族葬」が当たり前になり、「コロナ後」となってもそれが定着したままであるために、様々な問題が噴出しているという。
国民生活センターでは、葬儀をめぐるトラブルの相談が増えており、2020年度は686件だった相談件数が、2022年度には951件にのぼった。寄せられる相談は「葬儀費用」に関する問題が多い。規模の小さい葬儀なのに、想像以上に費用がかかってしまったという話が目立つ。
たとえば同センターに相談があった70代男性のケース。男性は「家族葬が30万円」という文言の広告を見て葬儀社に連絡を入れ、担当者と打ち合わせで見積もりを取ったところ、「90万円」という額が出てきた。広告にある料金との違いをめぐって担当者と延々やり取りするも、根負けして契約してしまった──。
「葬儀の現場を見ていても、こうした家族葬にまつわるトラブルが増えている実感があります」
そう話すのは、大阪・天王寺にある銀龍山泰聖寺の純空壮宏住職だ。
「前提として、コロナ禍によって親戚や知人に葬儀への出席を遠慮してもらう『家族葬』が主流になりました。以前からあった形態ですが、この3年ほどで急激に増えた印象です。それに伴い、“家族だけだから葬儀費用が安い”と思っていたのに、様々なオプションがつくなどして費用が膨らみ、葬儀社と揉めるといったケースが多くなっていると感じます」