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伝統芸能の世界に飛び込む女性たち 『能』で学んだ美しい所作と品性ある日本語、『神楽』を通して育んだ地域との絆

郷土芸能を習うことによって、地域住民との交流が深まり、視野も広がるという(イラスト/亀川秀樹)

郷土芸能を習うことによって、地域住民との交流が深まり、視野も広がるという(イラスト/亀川秀樹)

幻想的な世界で現実を忘れる神楽

 岩手県遠野市に古くから伝わる大出早池峰神楽という、地域の伝統芸能に魅せられ習い始めたのは、仙台在住のライター水野羽鳥さんだ。

「震災の取材で東北の沿岸部を回ったとき、お祭りや郷土芸能が被災されたかたがたとその土地を結びつけるものだと知り、興味を持ちました。そのとき、大出早池峰神楽は、毎年7月17日に早池峯神社で夕方から日付をまたぐ頃に奉納が行われると聞き、2年後にようやく見に行くことができました。

 神社のある大出集落は住民がかなり少ないため、周囲を見回せば漆黒の闇。その中で灯りやかがり火に照らされた神楽殿で神楽が舞われる光景はまさに異界です。すっかり魅せられて……」(水野さん・以下同)

 さまざまな縁がつながり、神楽に参加することになった水野さんは、毎週土曜の夜に車で片道3時間半かけて仙台市から遠野市まで稽古に通っているという。

「遠野に限らず、岩手県にはユネスコ無形文化遺産に登録された花巻の大償神楽のほか、数多くの郷土芸能が伝承されており、奉納以外にも公演や芸能祭などが盛んに行われています」

幻想的な世界で現実を忘れる神楽

幻想的な世界で現実を忘れる神楽(撮影/菊池正彦)

 仙台と遠野を行き来する中で、水野さんは気持ちに変化があったという。

「平日は仙台で仕事をして、週末は遠野に泊まって神楽を習うのですが、気持ちの切り替えができるので、余裕も出てきました。

 地域のかたがたと一緒に舞を習うことで、その土地の暮らしや自然の素晴らしさを知ることもできます。

 実際、郷土芸能をやりたくて移住されるかたもいらっしゃるそうです。地域の人たちとつながる、そして、自分が舞うことでその土地の皆様に喜んでもらえる。それが神楽の醍醐味のひとつですね」

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2024年2月8日号

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